ビジョン2035 完全版

ビジョン2035 -サンクゼール物語-
2035年の社会は
2035 年、AIの進化とともに機械で代替されるような仕事のニーズは減少するが、人と接する医療や教育や小売りなどの分野はより高度化し、ホスピタリティがより重視されている。気候変動や環境への関心はより高まっており、ESGへの配慮を活動の基本に取りこむ企業がより評価される時代になった。少子高齢化がさらに進展し、「夫婦と子供」家族とともに単身世帯も増加し、家族が多様化し、社会の構造も徐々に変化してきている。そうした中で、人と人がふれ合うリアルなコミュニケーションが重んじられ、また持続可能な環境への、特に若い世代の関心が高まり、田舎暮らしや自然に価値を置くライフスタイルが、もはや当たり前になっている。
一方で、世界はデジタルの力でより身近になり、世界中でリアルとECの垣根がなくなり、お客様は店頭で商品を確認し、販売員(コンシェルジュ)との会話を楽しみ、購入はECというスタイルも定着した。
社会におけるサンクゼールは
日本というアイデンティティを誇りにしながらも、人口が減少する待ったなしの課題に向き合い、私たちは早くから海外に目を向けてきた。和食に対する世界の高い評価から、和食の伝統と知恵をベースにした日本の食のブランドを生み出し、さらにそこに世界各地の食を融合させたハイブリッドなグルメブランド群を、世界中で次々と生み出している。必要な栄養素だけをとる新食材も現れる中、私たちはあくまで地域に根付いた伝統的な食文化に敬意を払いつつ、物語のある商品やホスピタリティのあるサービスを一貫して提供し続けている。異文化やローカルな食文化への知の探索を促し、発見する喜びに満ちた私たちのクリエイティブなあり方は、日本だけでなくアメリカ、アジア、ヨーロッパでもその存在が喜ばれ、それに共感する人々が集まってきている。
私たちのお客様はどの国であっても、新しい調理法や技術による定番商品の味のグレードアップに驚き、常に新しい商品、新しいカテゴリーを楽しみにしている。またリアルやオンラインでのコミュニティに参加することでコミュニティへの帰属感・安心感を得られ、シェフの料理教室や食育教室などリアル店舗でのコト体験の機会が充実し、そうしたさらに付加価値の高いサービスがお客様の生活の一部になっている。加えて、私たちの商品づくりの姿勢と様々な社会貢献活動への共感が、一つの購買動機になっている。
サンクゼールが提供する価値
私たちのブランドは、お客様にその商品の背景や物語を含めた「食べる喜び」を提供している。また、各家庭のキッチンへは、私たちの商品やサービスによって、「つくる楽しさ」を提供している。食を通した家族や仲間とのコミュニケーションがより重視されていく中、「食卓を分かち合う幸せ」を多くの人に提供している。増加している単身家庭に対しても(一人の食卓であっても)、一食一食を季節とともに丁寧に味わう「食の喜び」を提供し、それがお客様の生きる糧になることを願っている。食を大事にする人々に「愛と喜びに満ちた食卓」を提供したい、その願いが私たちの商品となり、サービスになっている。
加えて、高齢化の進行や健康寿命という考え方の浸透に伴い、健康への配慮もますます求められるようになっており、「おいしくて健康に」という観点は、私たちのベースになっている。
私たちのものづくりの原点と進化
私たちの原点は、創業の地であるペンションの食卓であり、それは家族やお客様の安心安全を想う愛情と、「おいしいね」と笑顔の輪が広がることへの喜びである。
その思いを受け継ぎながら、私たちは自ら、また各地の作り手とも協業し、おいしさを絶対追及してきた。素材のおいしさへの感動、地域の伝統食や作り手の工夫、知恵に学び、ものづくりへの情熱に感銘を受け、おいしさへのさらなる思いを掻き立てられながら、唯一無二の味わいを追求してきた。そうして「ずば抜けたものづくり」を実践している。お客様にも作り手の想いや開発のプロセスをあらゆる手段で生き生きと伝え、商品とその背後の物語を丸ごと味わって頂けるように工夫している。
価値・物語が100%伝わる仕組み
私たちの店には、常に新しい発見がある、わくわくがある。安心の定番商品に加え、時に季節を感じ、時にその土地その土地の食文化を感じ、またその国や地域の行事を取り込んだ食にも出会うことができる。商品の背景や作り手の人となり、開発の苦労、バイヤーや開発者が感動した体験が、そのままお客様に伝わっている。試食もお客様の求めに応じて盛んにおこなわれ、その商品を味わうことができ、レシピ提案や食べ方提案も、様々な形で行われている。
こうした、「想い」を作り手から販売員を通してお客様に伝えていく一気通貫の仕組、情報と熱量の伝達の仕組みを私たちは独自に構築し、それは他社の追随を許さぬものになっている。
生産拠点では
長野とオレゴンの生産拠点はオリジナリティのある製品の製造を中心に工場を拡張しながらも、世界中の協力工場のネットワークで、定番商品が常に改良され、新製品のアイディアが具現化され、日々、高品質な製品が生産されている。工場では、飛躍的に生産性が高まった中で、ものづくりに喜びを感じる多様な人々が、働きやすい環境の中で、一品一品に愛情を込めながらひたむきに安心・安全な生産活動を行っている。品質管理も日々地道に進化を続け、協力工場の衛生管理を含めた高品質な生産体制の強化を、不具合を含めた事例を定期的に共有しながら、日々実践している。
生産者ネットワーク
私たちの経営理念に共感し、同じ志を持った生産者ネットワークがグローバルで構築され、1000社を超える共同体ができている。気候変動や生産者人口の減少など、原料調達が難しくなっていく中、私たちは農産物の契約栽培、水産物の年間契約など、原料から吟味し、私たちの納得のいく素材を十分な量を入手できる体制も構築しつつある。
対等な立場で話ができる、深い信頼関係で結ばれた唯一無二の生産者ネットワークは、積極的に開かれて共創も活発化しており、イノベーションの基盤になっている。原料生産者、加工者は、私たちとの共創で付加価値の高い商品を生み出し、それぞれの強みを発揮することで販路がさらに拡大し、雇用の増加や工場の増設など、結果として地方経済の活性化につながっている。この強固で持続可能なエコシステムは、地方創生のロールモデルとして広く認知され、さらに一歩踏み込み、事業の生産性向上や後継者問題など、多岐にわたる課題を抱えて困っている生産者には、私たちが中に入り込んで事業継承や再生を先導した例も生まれている。
こうした自立的な事業の基盤となる食のSPAモデルがあることで、持続可能なエコシステムが時間の経過、生産者との価値共創の軌跡と共に益々強固なものとなり、お客様にバリューを持った高品質の商品を安定的に提供し続けることができている。
私たちの働き方
社内では、それぞれのライフスタイルに応じた働き方が尊重され、年齢や性別、国籍を問わず多様な人財が協働している。一人一人の個性を大事に、お互いに感謝し称え合う、人として尊敬できる関係を築き、生き生きと働きやすい環境とともに、安定した雇用が生み出されている。そのベースにあるのは、創業期より大事にしてきた「黄金律」の考え方であり、自分にしてほしいことをまず相手にする心である。強い人だけが生き残る弱肉強食ではなく、一人一人の賜物(その人に授かった能力、才能)を大事にし、得意技を引き出し、「その人その人のベスト」を尽くす、その集合体がサンクゼールである。
一方では、テクノロジーの発展に伴い、業務を積極的にロボットやAIに任せることで、一人一人がよりクリエイティブな仕事に専念できるようになり、次々と革新的な製品・サービスが生み出されている。生産性の飛躍的な高まりと共に、お客様に喜ばれる価値を継続的に生み出せている。
日々の業務は、不断に「形式知」に落とし込まれ共有されていくとともに、「暗黙知」の共有のための場や仕組みも醸成されて行っている。自ら学ぶ人々が集い、共に学び高め合う社風が醸成され、仕事を通した自己実現や成長を図ることができる場となっている。それぞれの分野では、イノベーションを起こすことに喜びを感じる専門家集団が形成されている。外部とも積極的にネットワークを活性化しながら高い付加価値を生み出し、日本でも収益性の高い企業として認められている。食品業界をけん引する存在となっており、パートナー(従業員)の物心両面の豊かさを満たすことを重んじる社風に、日本全国のみならず世界中から志の高い優れた人財が集まってきている。
サンクゼールの社会的意義
愛、誠実さ、まじめさ、素直さ、謙虚さといった時代を超えた普遍的な価値観に根ざした私たちの事業活動は、その在り方そのものが持続可能で開かれている。事業内容は積極的に開示され、自社を支える顧客、株主、取引先、パートナー(従業員)、地域社会などすべてのステークホルダーに共感され、信頼され、評価されている。
お客様への直接販売の過程で、ゼロエミッションの達成のみならず、次世代の未来の担い手が持続的な生産活動を行えるように、長期的な視点からの環境保全の取り組みによって、持続可能な社会への責任を果たしている。事業を通して社会的責任を果たし、それが人類の文化と平和への貢献につながっている。
私たちは地域の産業を大切に、環境や自然を大事にしながら食文化を継承・発展させ、長い年月をかけて熟成するワインのように、長野に根を張りながら、アメリカへ、世界へと、世界中の人々に必要とされるグローバル企業を目指していく。
おわりに
~すべての人にとって、私たちが私たちであるために、愛と喜びのある食卓をいつまでも~